箕面北部に外来オニアザミ「大群生地」/市民&行政が対応へ/深まる“黒い土”の謎

 

 トゲが多く危険な外来アメリカ・オニアザミの「大群生地」が、箕面市北部(止々呂美=とどろみ)で「発見」されました。


 昨年から活動する「箕面からアメリカ・オニアザミをなくす会※」(大濱会長)と行政(府・市)とが対応し始めたものの、膨大な数で かつ「謎」に包まれるなどで苦労中。
 以下、この問題の現状と課題です。

「アメリカ・オニアザミ」のイラスト(会作成)
「アメリカ・オニアザミ」のイラスト(会作成)

 

《「大群生地」の様子》

 

 ことの発端は、6月半ばに現地近くのニュータウン・森町(しんまち)に住むTさんが、この件を同会へ連絡。


 同会はただちに現地を調査し、今まで箕面市内には「大群生地」はないと思っていただけに「まさか!」「オドロキ!」・・・。

 

 ニュータウン西部を南北に通る新設の大阪府道(豊能池田線=止々呂美 吉川線)沿いに、約3kmにわたりアメリカ・オニアザミが連続的に群生。
 北から、「低密区間(0.1~10株/10㎡)」→「中密区間(20~30株/10㎡)」→「高密区間(100株/10㎡)」と続きます。

 

 特に、南の新名神高速道路I.C.近くの府道沿いは、ビッシリと生え「高密地区」。
 両側の沿道斜面(約4,500㎡)に、推定4~5万株が・・。
 低密~中密区間を加えると、府道沿い全体では5~6万株又はそれ以上・・。

 

 この「大群生地」を放置すれば、膨大なタネが周辺に広く飛散する悲惨!なことに・・。

市北部のアメリカ・オニアザミのマップ
市北部のアメリカ・オニアザミのマップ

 

 アメリカ オニアザミの会は、早速、府道を管理する府池田土木事務所へ対応を要請。
 また、近所に住み大濱会長と面識がある元府会議員の原田けんじ国会議員も協力、同土木事務所へ電話を。

 

 これらを受け、同土木事務所は梅雨明けの8/5・7に「高密区間」のアメリカ・オニアザミの刈り取りを実施。 
 2日間の実施で、「高密区間」の東斜面はきれいに・・(タネは一部飛散、しかし極力回収)。


 「高密地区」の4~5万株の約三分の二の東斜面のタネの飛散は、防止されました。
 1株がタネ約3,000粒をつける(北海道農業研究センター)とのことで、推定で約1億数千粒が回収できたことに・・。
 これにより、周辺地域へのアメリカ・オニアザミのタネ飛散の確率(負荷)を、大きく下げました。

※ 但し、その後、残念ながら西斜面は刈り取られていません。(予算等の都合?) 


《「大群生地」発生の背景》

 

 この「大群生地」がなぜ発生したのか~「謎」のままです。

 

(1)“黒い土”を巡る謎

 

 現地をあちこち調べたところ、アメリカ・オニアザミの「群生」は、概ね、有機物を多く含むらしい“黒い土”が敷設された斜面(のり面)のみで見られます。

手前の“黒い土”にアメリカ・オニアザミ、向こうには無し。
手前の“黒い土”にアメリカ・オニアザミ、向こうには無し。

 

 府道沿いの“黒い土”以外の場所では、アメリカ・オニアザミの生え方はまばら(散発的)。群生はほとんど見られません。

砂利用地でのアメリカ・オニアザミ(企業用地)
砂利用地でのアメリカ・オニアザミ(企業用地)

 

 その“黒い土”の「謎」を巡っては、次の3説があります。

 

【❶ 説:“黒い土”にタネを撒(ま)いた】
  約1年半ぐらい前に完成した府道の斜面緑化工事で、植物が生えやすい“黒い土”を敷き、その上にアメリカ・オニアザミのタネを撒いた(吹き付けた)のでは・・との説。

 

 池田土木事務所に聞くと、緑化のために撒いたのは「クロバー」と「ヨモギ」と説明。
 確かに現地の斜面の“黒い土”の一部にクロバーが残存(写真の囲んだ部分)、この説明を裏付けます。


 また、常識的にもわざわざアメリカ・オニアザミを撒くとは考えにくいのですが、果たして・・?。

クローバー・・アメリカ・オニアザミの間にわずかに残る
クローバー・・アメリカ・オニアザミの間にわずかに残る

 

【➋ 説:飛んで来たタネが“黒い土”のみで集中的に生育】  

 

 住宅地・森町の例では、同じ条件でもアメリカ・オニアザミが集中的に生える場所(ミニ群生地)と、生えない場所とが隣り合って見られます。(写真。森町南2丁目。黒い土ではないのですが・・)


 この例などから、アメリカ・オニアザミは土壌などの好き嫌い(適否)が強く、“黒い土”をとりわけ好むのでは・・との見方です。
 つまり、飛んで来て空からバラバラと広く落下・着地したタネのうち、“黒い土”に落ちたタネがより多く発芽し群生した・・との説です。


 この可能性は十分にありますが、それにしても“黒い土”には密生しほぼ均一に生えていて、タネが風に飛ばされて来たのなら“むら(濃淡)”ができるはずとの指摘も・・。

群生場所と、群生していない場所(手前)とが隣接
群生場所と、群生していない場所(手前)とが隣接

 

 

【❸説:“黒い土”にタネが混入】

 

  現地で掘られている造成土は、明るい黄色(黄土色)。逆に言えば、“黒い土”は明らかに域外から持ち込まれたもの。この“黒い土”に、アメリカ・オニアザミのタネが混入していたとの説。


 この“黒い土”に手で触った園芸関係者は、「(雑草のタネをほとんど含まない上質の)堆肥(色は黒)」などではなく、「(雑草のタネが混ざることもある)フツー(質の低い?)の黒い土」だろうと述べました。


 日本では、「土」は、防疫上、原則輸入禁止。“黒い土”は国内産になりますが・・。

 

 ❶~❸説は、その他の説を含め、引き続き調査。 

 

(2)市北部への大量侵入の「謎」

 

 そもそもアメリカ・オニアザミのタネが、市の北部へどのように大量に侵入したのか?~次の「謎」です。

 

 7~8年前に新設府道の北方区間付近で、突然、大量のアメリカ・オニアザミが発生。その後、「煙のようにタネが飛んだ」そうです(地元のNPO法人「とどろみの森クラブ」)。そこから周囲の住宅街やオートキャンプ場などに、広がった可能性が高いです。


 つまり、この付近は市北部のアメリカ・オニアザミ発生の「スタート地(最初のクラスター地)」とみられます。(なお、この「スタート地」付近は、現地の山の黄色い土で新たに造成され、今はアメリカ・オニアザミはほぼゼロ)

 (地形的に隔離された)市の北部で、造成されたニュータウン(森町)などに域外から外来植物のタネが入り繁殖するには、自然の状態では数年間以上かかるでしょう。
 現にセイタカアワダチソウや外来系タンポポなど他の外来植物は、開発後10年以上たつ今でも地元にはあまり入り込んでいないようです(「とどろみの森クラブ」「生きもの会議(タンポポ調査を実施)」)

 


 つまり人の行為が絡んでアメリカ・オニアザミのタネが大量に域外から入ったのはほぼ間違いなく、造成工事などに伴う可能性が高いと思われます。
 但し、この時に“黒い土”が使われたのかどうか・・今のところは不明。

深い緑の中の「市北部」ー域外から植物のタネは飛来しにくい
深い緑の中の「市北部」ー域外から植物のタネは飛来しにくい

 

(3)府道以外にも、“黒い土”の群生地が・・

 

 さらに調べていくと、府道以外に企業(分譲)用地や新名神高速道路沿いにも“黒い土”の斜面があり、アメリカ・オニアザミが群生。


 これらの位置は近接していても工事事業者などが異なる可能性があり、なぜ共通して“黒い土”の群生地なのかがー「謎」。同じ土木事業者が、工事をしたのでしょうか。

企業用地背後の“黒い土”の斜面
企業用地背後の“黒い土”の斜面
新名神沿いの“黒い土”の斜面
新名神沿いの“黒い土”の斜面

 

(4)補足・・謎は深まる

 

 ここまで書き気が付いたのですが、そもそも「スタート地」にアメリカ・オニアザミが入り込むには、誰かが意図的にタネをバラまいたのでなければ、上記の“黒い土”の❸説(土へのタネの混入)でないとつじつまが合いません。
 そして、これがその後も続いたのでしょうか。

 

 この間、市北部の各種の造成工事ではアメリカ・オニアザミの群生を気にせずに“黒い土”を利用し続けた?、この間、住民が問題視していたのに群生地発生の継続は問題にならなかった?・・のでしょうか。

 

 そして、その後、新たに造成工事が行われた「スタート地」は別にして、それらの群生地は北から順に密度を下げた(衰退した)?・・のでしょうか。

 

 カギはどうも“黒い土”のようで・・、その「謎」は深まるばかりですね。

 

(5)今後の方向

 

 いずれにせよ、市北部(山林以外の住宅地・開発地など)にはアメリカ・オニアザミの生育地が既に広がっており、その除去は容易ではなく、難しい局面も考えられます。


 さらに、この問題は、アメリカ・オニアザミの法に基づく「特定外来生物」への指定(規制が厳しくなる)や、造成に伴う緑化工事のあり方(再発防止)など、全国的な課題ともかかわっています。

 

 なお、6月上旬に箕面市議会の委員会で、この問題が取り上げられ、少し議論されたとのことです。

 

 その中で、「箕面からアメリカ オニアザミをなくすの会」は、現在、行政(府・市)や地元組織(自治会・「とどろみの森クラブ」)などと話し合い、この問題の解決への取り組みを進めています。


  また市民組織「生きもの会議」「NPO花とみどり」「NPO山麓委員会」なども、この活動への応援を表明しています。
 箕面市は、HPでアメリカ・オニアザミの除去を呼びかけています。

 箕面市をはじめ全国的な幅広い人々の理解と応援が、求められています。

アメリカ・オニアザミが除去された“安心公園”で遊ぶ子供
アメリカ・オニアザミが除去された“安心公園”で遊ぶ子供

 

【コメント】市南部では、着実に除去活動進む

 

 今回は「大群生地」=箕面市北部の問題をクローズアップ。


 一方、市の南部市街地では多数のメンバーがfacebookなどでつながり、発見+除去の役割分担でアメリカ・オニアザミをなくす活動に取り組み、昨年は200株以上、今年は数百株以上除去などの成果を着実に上げています。
 ※日々の動きは、フェイスブック(facebook)「箕面からアメリカ オニアザミをなくす会」を参照(閲覧はどなたでもOK。投稿はfacebook入会が必要)。

 

 このように市民の創意を活かしたアメリカ・オニアザミ除去の実践的・理論的な取組は、「安全な環境」「健全で多様な生態系」を目指すとともに、まだ問題の指摘にとどまることが多い外来植物克服について実践への《突破口》を開くなど、その意義は全国的に見ても大きいとみられます。

 

(この記事は、facebook「アメリカ・オニアザミの会」など同会の情報を基に執筆。NPO花とみどり事務局)

       ※8/31に、記述を若干追加。