“ナラ枯れ”だ 身を守ろう!~ 木々がささやく 「トーキング・プラント法」や、自ら守る「ワクチン法」での予防のテスト開始/箕面

※ この記事に関し、ナラ枯れプロジェクトチームから「過大な期待が広がっても困るので、より正確に伝えて欲しい」との連絡がありました。そこで、再度、取材し、記事の一部を訂正させていただきます。
 主要な訂正は、今回のテストが周辺木々をナラ枯れから守る「トーキングプラント法」をただちに目指すのでなく、第一ステップとしてまず対象木自体のナラ枯れへの抵抗性を高めるいわば「ワクチン法」の可能性を確かめるものだということです。
 なお、両法とも健全木に擬似的な軽度のナラ枯れ被害を与え警戒物質を発生させるという新しい対処方法として注目されるもので、今回のテストは国の森林総研のアドバイスを受けており、全国的にも初めての試みの可能性があります。
 

---(以下、修正後の記事です)--------------------------------


 今、箕面の里山林や公園林・社寺林などで“ナラ枯れ”被害が、じわじわ広がっています。


 これを効果的に防ぐため、ある種の物質を出して木々が互いにささやきあう現象を生かした「トーキング・プラント法」や、樹木が自ら身を守る「ワクチン法」で対応できないか - このアイデアを生かした全国でも珍しいテストが箕面で始まりました。

 

 5/18、「ふるさとの森を守ろう」と瀬川北公園にNPO山麓委員会ナラ枯れプロジェクトチームのメンバーや行政関係者などが集まり、国の森林総合研究所の専門家のアドバイスを受けつつテストを開始。

新緑の森-これを守る新テストを始める関係者たち
新緑の森-これを守る新テストを始める関係者たち


 “ナラ枯れ”被害は、対策をとらなかった場合でも翌年に「同じ木」や「すぐ近所の木」へはほとんど広がらず、少し離れた木で被害が拡大します。 

 つまり、被害木が警戒物質(又は助けを求めるSOS物質)を出したためナラ枯れを引き起こす虫=カシナガが再び取り付くのを避け、あるいは被害木の警戒物質を近所の木が葉でキャッチし自ら抵抗力を高める物質を生産したためカシナガが取り付くのを避けたとの見方が有力です。

 

 これは被害木が警戒物質を作り発散し(いわば「危ないよ」とささやき(トーキングし))、自ら及び周囲の木々の「免疫力」(「被害抵抗性」)を高めている※と推察されます。

 

※ “ナラ枯れ”ではまだですが、この現象は一般的には証明済み。
 例えば、いい香りのジャスミンなどが含むジャスモン酸は「外敵による摂食などの傷害を受けた際に外敵に抵抗する遺伝子を発現させるシグナル物質としてはたらく(傷害応答)」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)といいます。


 この現象を被害予防に活用したのが、ここで比喩的に「ワクチン法(自らの防衛)」「トーキング・プラント法(防衛力の近所への伝播)」という「病虫害抵抗性誘導法」です。。

 “ナラ枯れ”被害を受けやすいコナラに、あらかじめ軽度の刺激(模擬被害)を与える(いわばワクチンを打つ)ことで近所を含めた樹木の被害発生を予防するものです。

 

 もし成功すれば、従来は1本ずつ予防注射(幹の根元に薬剤を注入)しなければならなかったのに対し、簡単な刺激で1本から近所の木々を含めて面的にある程度予防できると期待されます。

 

 今回は、刺激としてコナラに細い穴(直径3mm)を10cm間隔で3~4周ほどあけました。

 作業はこれだけ・・手軽るで薬品も必要なく、樹木へのダメージ(影響)も少ないとみられています。

 

 一般的には、“ナラ枯れ”の原因となる長さ5mmのカシナガ(カシノナガキクイムシ)はドングリのなる木の中で子供を増やし、翌年初夏の梅雨明けなど気温が20℃以上の晴れた早朝に大量に飛び出し他の木に侵入、ひどい侵入では約1か月後に(鎌田直人東大教授)、あるいは葉がしおれ始めて1~2週間後に(森林総研)木が枯れ始めるといわれ、今回のテスト結果はこの秋頃には判明の予定。

作業の目印のため穴にツマヨウジを・・(作業後には抜きます)
作業の目印のため穴にツマヨウジを・・(作業後には抜きます)


※ このテストは、山麓部でも実施。

※ 今回の公園でのテストは、まず「ワクチン法」のテストを主眼にしています。

  またテストの効果ですが、この夏にカシナガの被害を全く受けなかったとしても、風向きなどで飛来しなかったケースなどもあり、「免疫効果が生み出された」とただちに結論づけるられるのではなく「生み出された」可能性を示すにとどまります。しかし、こうしたテストをいろいろ行う中で、「効果がある」と言える可能性が高まってくるでしょう。

※ 箕面での観察によると、被害木をビニールシートなどで覆っておくと、梅雨明けなどに出てきて拡散できなかった次世代のカシナガが再び元の木に取り付く「再アタック」現象が起こることがあり、樹木の警戒物質も絶対的なものではなさそうとのことです。
 ※ なお、先に箕面を訪れた森林総研の専門家は「普通はナラ枯れが入ると数年間で全山に及び莫大な被害となる。箕面の山では数年間でも被害は数百本(枯死木)にとどまっており、(対策に)よくがんばっている」と評価。
 このように箕面はナラ枯れ防止の技術レベルでは全国的なトップクラスにあるとみられ、今回のテストもこうした中で意欲的

に取り組まれているといえるでしょう。
※ 昨年は箕面のまちなか(平野部)でも、約10か所で被害が発生。市とNPO花とみどりとが対策を呼びかけ促進しています。
※ 写真は5/18・25に撮影。

                                          (NPO花とみどり・事務局)

 

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コメント: 2
  • #1

    土井 一旦 (日曜日, 31 5月 2015 20:31)

    「トーキング・プラント法(病虫害抵抗性誘導法)」とは、初めて知りました。(もちろん樹木の事などよく知りませんが)
    ワクチンや薬でなく、自己で免疫を作る方法など自然の力を生かした方法と思いますが
    ならがれが収まると良いですね。お疲れ様ですが、頑張って下さい。

  • #2

    NPO花とみどり事務局:重本 (土曜日, 06 6月 2015 16:34)

    土井さん、
     コメントありがとうございました。
     箕面のナラ枯れ対策は技術面以外に、国有林・国定公園などがあることもあって、国・府・市・NPOが協議の場を設けスクラムを組んでがんばっています。この体制も、特筆すべき点でしょう。
     最近、「ナラ枯れ」という言葉は少し認知され出しましたが、まだまだ一般の理解は広がっていません。
     莫大な被害が出れば一挙に関心が高まるのでしょうが、それでは取り返しがつかず、上記の関係者は地道にがんばっておられます。